ト ラ ッ シ ュ マ ス タ ー マ イ ン ド

2004/2/25(水)〜3/1(月)
@tiny alice 
タイニイ・アリス

03-3354-7307

全席自由
前売 2980円
当日 3300円(消費税込み)

cast

カゴシマジロー
ひわだこういち
吹上竜啓
山口祐史
龍 坐
ハカセ(モアナファクトリー)
飢千街(M☆A☆S☆H)
渡辺慎一郎
小林麻子(小野事務所)
田口理恵(プライムレイ)

staff

作&演出
中津留章仁
音楽
高畠洋
照明
佐々木総
衣装
佐山妙
ヘアメイク
山倉優子(Lenshair)
宣伝美術
中塚健仁、中津留章仁
制作
ラストクリエイターズプロダクション
神野和美

story

2002年9月12日、友人の医師から正式に性的不能であると告知を受ける。

 それからしばらくの間そこにいた。廊下で待っていた妻にそのことを伝えると、彼女は声をあげて泣き出した。「愛してるわ、愛してるわ」何度も何度もそう繰り返した。
 そして互いの愛を確かめるように二人、舌を噛み切る位の激しさで、長い、口づけを交わした。もう体が一つにはなれないという絶望感が、生ぬるい温度でじわじわと現実味を帯びてきた頃、代わりに、互いの涙がそれぞれの頬を伝い、鼻の下、唇の上辺りで、一つになった・・・。

 trasick以降からの3作に渡り「自己と他者」を通じて象る「個と社会」への果敢なる彼らの独創的アプローチは、今作で彼ら自身の闘いを投影する形でほぼ一つの完結を迎える。
 多様化する演劇言語(モダニズム)を内包するスタンスを保ちながら現代的な言葉選びと笑いの要素を一切排除した彼らの無謀とも思える挑戦は、現存する演劇のモダニズムからの逸脱を計ろうとする精神をすでに垣間見せ、同時に恐るべき完成度を持って成功に導いた。
 次世代を試行錯誤する上で歴史は重要な要素となるが、彼らの今作からも、「一昔前」の空気感や当時はまだ見落とされていた演劇言語を再解釈し、それらをそこかしこに覗かせながら「未来」を解く方程式を作り出そうとする明確な意思表示が伺える。そしてそれは、彼らの語る「21世紀型のポストモダニズム」に、単なる原点回帰や回顧主義ではない、真の意味での「次世代演劇言語」の連想を誘発させた。
 他の多くのカンパニーが向かうベクトルに対し、ねじれの位置にそれを配した最後の創造者集団が、その実験を繰り返しシーンへ放った「次世代」というキーワードへの、演劇的解答の確かなる一例。